伝承に曰く――

かつて此の地は、救いなき怨嗟と絶え間なき叫喚が織り上げる深き昏冥に満たされていた。
死滅が。破壊が。絶望が。あらゆる辛苦が対なるを駆逐し、その意味すらをも忘却に追いやった暗黒の時代。
地に生きる全てが滅亡の淵へと疾駆する中、僅かに残されたもの達は、凍えた痩身を寄せ合い、ただ俯き震える以外の術を知らなかった。
そんな折りであったと云う。光輝を抱きし大いなる御遣いが、白天より降り来たったのは。

御遣いは無尽の慈愛で以て遍く世界を照らし出し、地には再生の歓喜と深謝の歌声が充ち満ちた。
『聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな! 嗚呼、あなたの栄光は今、天地を満たしています』
共生が。尊重が。敬愛が。あらゆる美徳が対なるを放逐し、今日へと繋がる地上の繁栄がもたらされた。
我々は御遣いに飽くなき感謝と愛を捧げ、御遣いもまた我々人を果てなき慈しみで包容する。
斯くして、世界は形作られているのである。